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伊東 葵(いとう あおい)

管理栄養士
博士(食品栄養科学)(2026年3月 静岡県立大学)
国立健康危機管理研究機構 臨床研究センター 疫学・予防研究部 上級研究員

ORCID: 0000-0003-1008-3367
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 *責任著者
 #同等に貢献した共同筆頭著者


血中微量元素と糖尿病発症リスクとの関連:血清コホート研究

概要
 日本人勤労者を対象とした血清コホート研究の残血清と健診データを用いた症例対照研究により、血中元素濃度と糖尿病発症リスクとの関連を調べました。具体的には、調査開始時に糖尿病でなかった約4800人を5年間追跡し、その間に糖尿病の診断基準に該当した325人の症例と、各症例に年齢、性別、健診受診日が同じようになるように選んだ611人の対照を選定しました。症例と対照の血中元素濃度をICP-MSで測定し、各元素の濃度が低い群から高い群まで4グループに分けたうえで、喫煙、飲酒、BMI、高血圧などの影響を統計学的に調整し、群間で糖尿病発症リスクを比較しました。




重金属と糖尿病
 水銀やカドミウムなどの重金属1が高濃度で体内に取り込まれると、重大な健康障害をもたらすことが知られています。一方、私たちは、これらの重金属を食事や飲料水、大気を介して低濃度で体内に取り込んでいます。動物実験では、カドミウムや水銀がたとえ低濃度であっても糖代謝の異常をもたらすことが報告されていますが、ヒトにおいてこれらの重金属が糖尿病リスクを高めるかは明らかではありません。そこで本研究では、日本人成人を対象に、血液中の重金属濃度と糖尿病発症との関係を調べました。その結果、血液中の水銀濃度が高い人ほど、その後に糖尿病を発症しやすいことが示されました。一方、カドミウム、鉛、ヒ素では、糖尿病との明らかな関係は認められませんでした(下図)。この研究結果をClinical Nutrition(2026)で発表しました。

水銀、鉛、カドミウム、ヒ素の血中濃度を四分位(Q1〜Q4)に分け、最も低いQ1群を基準としたときの2型糖尿病のオッズ比と95%信頼区間



必須元素と糖尿病
 マンガン、亜鉛、銅などの元素は、生命維持に欠かせない必須元素とされています。これらの必須元素は、血糖の調節に重要な役割を果たすことが知られています。ただし、体内における必須元素の必要量はごくわずかであるため、これらが過剰に取り込まれると、血糖の調節に悪影響を及ぼすことが動物実験で報告されています。そこで本研究では、日本人成人を対象に、これらの元素の血中濃度と、その後の糖尿病発症との関連を調べました。その結果、マンガンや亜鉛の血中濃度が高い人ほど、糖尿病を発症する可能性が高いことが示されました。この研究結果を、Biological Trace Element Research (2026)で発表しました。

主な財源
研究活動スタート支援(研究課題番号:25K24284)
期 間:2025年7月~2027年3月
配分額:2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)


実行委員長賞
マンガン、コバルト、銅、亜鉛、セレン、ヨウ素の血清濃度と2型糖尿病発症との関連:コホート内症例対照研究
メタルバイオサイエンス研究会2025.2025年10月(八王子).[関連論文]


国外

  1. Serum vanadium, bromine, rubidium, strontium, antimony, and barium and the incidence of type 2 diabetes: a nested case-control study among Japanese adults.
    Aoi Ito, Shohei Yamamoto, Miyuki Iwai-Shimada, Yayoi Kobayashi, Kenta Iwai, Shoji F. Nakayama, Maki Konishi, Yuya Watanabe, Shuichiro Yamamoto, Tohru Nakagawa, Shin Yamazaki, Tetsuya Mizoue.
    ISEE 2026, ミュンヘン, ドイツ, 2026年8月30日–9月2日.(ポスター)
    [関連論文(under review)]

国内

  1. 血清水銀濃度と肝機能の関連
    三井葵, 渡辺祐哉, 中川徹, 岩井美幸, 小林弥生, 岩井健太,​ 中山祥嗣, 山崎新, 伊東葵, 山本尚平, 溝上哲也, 辻真弓, 山本修一郎
    第99回日本産業衛生学会. 大阪国際会議場 (大阪府). 2026年5月29日.(ポスター)
  2. Pre-infection serum amino acids and the incidence of long COVID among healthcare workers
    Aoi Ito, Shohei Yamamoto, Tetsuya Mizoue, Maki Konishi, Kumi Horii, Junko S. Takeuchi, Wataru Sugiura, Norio Ohmagari
    第36回日本疫学会学術総会・第3回国際疫学会西太平洋地域合同学術集会. 出島メッセ長崎 (長崎県). 2026年1月28–30日. (口演)
    [関連論文(under review]
  3. 四季における腸内細菌叢を介した食物繊維摂取量と肥満関連指標の関連
    伊東葵、後藤千穂、栗木清典
    第84回日本公衆衛生学会総会. グランシップ(静岡県).2025年10月29–31日.(ポスター)
    [博士論文]
  4. 水銀、カドミウム、鉛、ヒ素の血清濃度と血糖値、HbA1c、インスリン、HOMA-IRとの関連
    伊東葵、山本尚平、岩井美幸、小林弥生、岩井健太、中山祥嗣、山崎新、中川徹、溝上哲也
    第10回日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会年次学術集会. 奈良県コンベンションセンター (奈良県). 2025年12月13–14日.(口演)
    [関連論文]
  5. マンガン、コバルト、銅、亜鉛、セレン、ヨウ素の血清濃度と2型糖尿病発症との関連:コホート内症例対照研究
    伊東葵, 山本尚平, 岩井美幸, 小林弥生, 岩井健太, 中山祥嗣, 山崎新, 渡辺祐哉, 中川徹, 溝上哲也
    メタルバイオサイエンス研究会2025. 八王子市学園都市センター (東京都). 2025年10月22–23日.(口演)
    [関連論文]
  6. 日本人における水銀、鉛、カドミウム、ヒ素の血中濃度と糖尿病発症との関連:コホート内症例対照研究
    伊東葵, 山本尚平, 岩井美幸, 小林弥生, 岩井健太, 中山祥嗣, 山崎新, 中川徹, 溝上哲也
    第35回日本疫学会学術総会. 高知市文化プラザかるぽーと (高知県). 2025年2月12–14日.(ポスター)
    [関連論文]
  7. 成人期の日本人における血清水銀濃度はインスリン抵抗性と関連する:日立健康研究
    伊東葵, 山本尚平, 岩井美幸, 小林弥生, 岩井健太, 中山祥嗣, 山崎新, 中川徹, 溝上哲也
    メタルバイオサイエンス研究会2024. 水俣市総合もやい直しセンター (熊本県). 2024年10月17–18日.(口演)
    [関連論文]
  8. 60代男性における魚摂取量と血清テストステロン濃度との関連:日立健康研究II
    伊東葵, 山本尚平, 南里明子, 福永亜美, 井上陽介, 中川徹, 溝上哲也
    第34回日本疫学会学術総会. 大津プリンスホテル (滋賀県). 2024年2月1–2日.(ポスター)
    [関連論文]
  9. Prevalence and correlates of vitamin D deficiency during COVID-19 pandemic among healthcare workers
    伊東葵, 山本尚平, 小西満貴, 溝上哲也, 大曲貴夫
    第8回日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会年次学術集会. 富山大学 五福キャンパス (富山県). 2023年12月1–2日.(口演)
    [関連論文]
  10. 四季における腸内細菌叢を介した糖代謝指標に対する緑茶摂取量の関連
    伊東葵, 橘拓希, 川島晃子, 川畑春佳, 後藤千穂, 栗木清典
    第33回日本疫学会学術総会. アクトシティ浜松 (静岡県). 2023年2月1–3日.(ポスター)
    [関連論文]
  11. 低糖質食により体重減量した痩せ型女性に対し糖質摂取増量とレジスタンス運動を促し耐糖能が改善した1例
    紺野佑衣, 戸崎貴博, 村瀬世枝恵, 佐藤史織, 藤吉春奈, 伊東葵, 平田愛梨, 近藤正樹, 神谷英紀, 中村二郎
    第23回日本病態栄養学会年次学術集会.国立京都国際会館 (京都市). 2020年1月24–26日.(口演)
  12. 世界糖尿病デーランチ会の活動報告
    伊東葵, 紺野結衣, 佐藤史織, 戸﨑貴博
    第33回糖尿病患者教育担当者セミナー.愛知県産業労働センター・ウインクあいち (愛知県). 2019年9月1日.(口演)
  13. 2型糖尿病患者における三大栄養素摂取比率が血糖コントロールと治療満足度に与える影響についての検討: 第1報
    藤吉春奈, 戸崎貴博, 佐藤史織, 百済綾恵, 紺野佑衣, 村瀬世枝恵, 伊東葵, 平田愛梨, 稲垣朱実, 神谷英紀, 中村二郎
    第61回日本糖尿病学会年次学術集会.JPタワーホール&カンファレンス (東京都). 2018年5月24–26日.(口演)
    [UMIN] [抄録:糖尿病. 61巻. Supplement号]


脚注

  1. ヒ素は正確には半金属に分類されます。 ↩︎